いちごみるくと恋わずらい
「……あ!」
そこにいたのは、私が朝突き飛ばしたまま逃げだしてきてしまった相手。
風紀委員長さんだ。
自販機が並ぶ壁際に寄り掛かるようにしていた彼は、壁から背中を離してこちらに近づいてきた。
思わず一歩、後ずさる。
「え、何。モカ、卯月くんと知り合いなの?」
「知り合いっていうわけじゃないんだけど……」
隣で驚いたように訊いてきた名桜に、何と答えていいものか迷った。
……きっと今の私は相当困った顔をしているに違いない。
────卯月隼人(うづき はやと)。
名桜が彼を“卯月くん”と呼んだのをきいて、そういえばそんな名前だったと思いだす。
「今朝はドーモ」
からかうような口調に、慌てて視線を名桜から卯月くんに戻した。
ぱちりと目が合って、卯月くんがふっと笑う。