いちごみるくと恋わずらい
「だからモカなのか」
「可愛いでしょ?」
正真正銘そのあだ名の名付け親である名桜ちゃんが、ふふんと誇らしげに笑った。
「なんでこっちの子が偉そうなわけ?」
「こっちの子、って!あたしにも香川名桜(かがわ なお)っていう立派な名前があるんですけど!」
「へー」
「フリでもいいからもうちょっと興味持ちなさいよ」
ぽんぽんとテンポよく交わされる名桜ちゃんと卯月くんの会話に、思わずクスッと笑ってしまう。
ふたりともすごいなぁ、もう仲良くなってる!
「あ、香川とモカ。……お、なんか珍しいヤツと喋ってんじゃん」
ふいに横から声を掛けられて視線を向けた先に見えたのは、こちらに歩いてくるメガネ男子。
パンを片手に持っていることから察するに、どうやら購買の信じられない長さの列に並んでいたようだ。