いちごみるくと恋わずらい
私は今まで悲しいことに彼氏がいたこともないし、男子とそういう雰囲気になったこともないから、きっと今年も変わらずに風紀委員とは無関係な毎日を送っていくんだろうなぁ、とぼんやり思った。
好きな人ならそれなりにいたことはあるけど、そこから発展したことはないもんなぁ……。
────長い桜の並木道を抜けて校門をくぐると、グラウンドからは元気のいい声が聞こえてくる。
新しい年度がはじまったばかりで、今日が始業式だというのに、運動部のほとんどはいつもどおり朝練があるらしい。
「あ……!」
グラウンドと校舎へ伸びるアスファルトとを隔てる背の高いフェンスに思わず近づいていってしまったのは、あるひとりの姿が目に入ったから。
てのひらが触れたフェンスが、カシャン、と音を立てた。
グラウンドでは、朝練だからか本格的な試合形式の練習というよりは、走り込みや軽いストレッチをしたり、キャッチボールやパス練習をしたりと、軽めの練習を行っているところが多いようだ。
そしてその走り込みをしている人たちのなかのひとりの姿に、私は目を奪われてしまった。