いちごみるくと恋わずらい
佐伯たちが買ってきた食べ物はどれもおいしそうで、さっきまで感じていなかった空腹が訪れてきた。
佐伯いわく、モカも香川も菊池と話すのは今日が初めてらしいが、そう言われなければ気付かないくらい、もうすでに菊池は馴染んでいた。
佐伯、香川、モカ、菊池、俺の並びで円になっているから、菊池のとなりで楽しそうに笑うモカが真正面に見えて、それが俺としてはとてつもなく面白くない。
「……」
ひとつため息をついて、お好み焼きが入ったタッパーを手に取った。
会話には加わらずに、香ばしいソースの香りが食欲をあおるそれを黙々と口に運ぶことに専念することにする。
……分かってただろ。
こういう思いをするのが分かってたから、今まで必死で我慢してたんだろ。
それでも。
それでも、少しでもいいからと彼女に近づくことを選んだのは俺だ。
菊池との接点を作ることになると分かっていながら、きっかけはどうであれ半ば強引に今日の花見に参加させたのだってまぎれもなく、俺。
「それ、美味しい?」
ふとそんな声が耳に届いて顔を上げると、ぱちっと彼女と目が合う。