いちごみるくと恋わずらい
「そんなことはわかってたんだけどさ……」
言い訳じみた響きがこもっていたことには気付かないふりをして言葉を吐きだすと、西野は呆れたように笑った。
「バカねぇ」
「は……?」
「分かってたつもりだった、の間違いでしょ?」
登校してくる生徒を窓から眺めていた西野は、そこでようやく視線を俺に向けた。
「だから言ったじゃない。その役職は、あんたみたいに恋愛真っ最中のヤツがいる場所じゃないって。絶対につらい思いをすることになるわよ、って」
「……」
「それでもその場所を選んだのは、卯月でしょ。……しっかりしなさい」
窓辺にいた西野が、ゆっくり俺のところに近づいてきて、一枚の紙を差し出してきた。
反射的にそれを見て、そしてもう一度、ため息。
『停学』
重々しいその文字に、心がズンと深く沈んだ気がした。
「それが卯月の仕事だよ」