いちごみるくと恋わずらい
♯5 やくそく
#5
朝、自分の席に着いた私は、いつもどおり名桜ちゃんとおしゃべりを始めようとしたのだけど、やけにそわそわとした周りの空気を感じて、まずはその理由を尋ねることにした。
軽い気持ちでたずねた私に、驚いたように目を丸くして、
「掲示板見に行ってないの?」
と聞き返してきた名桜ちゃん。
テスト結果を確認しに行くときくらいしか使わない掲示板の登場に戸惑いつつも、「見てないよ」と返す。
すると、名桜ちゃんは戸惑いがちに目を伏せて、
「付き合ってたのがバレて停学になった子がいるんだって」
と言った。
瞬間。
ドクン、と心臓がやけに大きく音をたてた。
「停学……?」
嘘でしょ?
そう訊いても、名桜ちゃんは言いにくそうに「嘘じゃないよ」と視線を伏せたまま言った。
……朝からずいぶん賑やかだなぁと思っていた。
だけどまさかその理由が、男女交際禁止の校則違反者が停学になったから、だなんて。
「そ、っか……」
どうして自分がこんなにショックを受けているのか分からない。
名桜ちゃんが挙げた停学になったらしい生徒の名前に、聞き覚えはなかった。
今までこんなふうに処罰された人を知らなかったから、衝撃が大きいのかもしれない。
『今度ふたりでメシでも行こうぜ』
ふいに、昨日の卯月くんの言葉が脳裏によみがえってきた。
キュッと無意識のうちに膝の上で拳を強く握りしめてしまう。