いちごみるくと恋わずらい
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「……はぁ」
息を吐きだすと、机を合わせて一緒に昼食をとっていた名桜ちゃんと佐伯くん心配そうに顔を見合わせた。
もっとも、私は自分のことに精一杯で、そんなふたりの仕草にも気付かなかったんだけど。
大好きな甘い玉子焼きも、気付いたらお弁当箱から消えている。
……私、いつの間に食べたんだろ。
いつもなら楽しみに最後までとっておくのに。
「……ねぇ、モカ」
はあ。
どうしよう、この落ち込みよう。
気分ってどうやったら回復できるんだっけ。
ちゅー、と紙パックのいちごみるくを飲みながら、だけどいつもの心地よい甘さが感じられなくて、心の中でもういちどため息。
「モカ!」
「えっ?は、はいっ!」
半ば叫ぶような名桜ちゃんの声にハッとして、ストローから口を離し、慌てて返事を返せば、何度目かの呼びかけだったことにも気付いた。
……私、ぼーっとしすぎだ。
「……お客さん、来てるよ」
「え?」
名桜ちゃんの視線を追う前に机に影が落ちていることに気付いて、思わず顔を上げていた。
すると。
「っ!?」