いちごみるくと恋わずらい

「……なにしてんだよ。あんた本当にマヌケだな」

「そ、そんなこと」

「すぐ洗えば落ちるんじゃねーの」


そう言いながら私を椅子から引っ張り上げた卯月くんは、私の手を引いて教室を出ていく。

足早な卯月くんの歩調についていくのは結構大変で、私はほとんど駆け足だった。

すれ違う人たちから向けられる視線が痛い。

顔を上げていると、見られているのがひしひしと伝わってきてしまうから、その視線から逃れるように、私は下を向いたまま、ただただ連れられるままについていった。


てっきりラウンジにある水飲み場に向かっていると思っていた私は、予想外に聞こえた、ガラッという扉の開く音にようやく顔を上げる。


「……えっ!?」


教室に入る寸前に見えた、『生徒会室』のプレートに驚きながらも、私は引かれるままで、抵抗する暇もなかった。


「ほら、早く」

「え」


水が流れる音が聞こえてそちらを見ると、ドアのすぐ近くに小さな洗面台があって、卯月くんがその蛇口をひねったようだった。


勢いよく水が流れ落ちている。

ここで洗えってことだよね……?

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