いちごみるくと恋わずらい
「……え、と」
せめて濡れたのがシャツだったらよかったのに。
スカートだから、脱いでしまうか、かなり上まで裾を持ちあげないと水が出ているところまで届かない。
片方の手首は相変わらず掴まれたまま。
どうにも行動に起こせないでいると、卯月くんがハッとしたように掴んでいた手を離した。
「あ、俺が見てたら洗えないよな。悪い……!」
と慌てたように言って、くるりと私に背を向けた。
初めて見た冷静さを欠いたような卯月くん。
卯月くんでも慌てたりするんだね。
クスッと思わず笑みがこぼれてしまった。
「ありがとう……」
背を向けたままの卯月くんに、小さく呟く。
流れたままになっている水に、裾を持ち上げてシミになってしまったところをさらす。
完璧に落とすことは無理かもしれないけど、だんだん薄くなっていく桃色にほっと息を吐いた。
よかった、目立たなくなるくらいには落ちそう……。
キュッと蛇口をひねって水を止めた。
するとすぐに、
「落ちた?」
と後ろからそんな声が聞こえて、びくりと肩が跳ねてしまう。
汚れを落とすことに必死になっていてすっかり忘れていた。
そういえば、卯月くんと一緒だったんだっけ……っ!
パサ、と手から掴んでいたスカートの裾が落ちていった。