いちごみるくと恋わずらい
気付いたら、私は卯月くんの腕の中にいた。
何が起きたのか分からなくて、身体がかたまってしまう。
「ちょ、卯月くっ、!?」
ぎゅうっ、と抱きしめられていた腕の力に驚いて声を上げれば、少しだけその力が弱められて、そのことに安堵する暇もなく、顎をくいっと持ちあげられた。
な、な、な、なに!?
上から降ってくるまっすぐな視線にまるで絡め取られてしまったように、目をそらすことなんてできない。
少しでも距離を取ろうと身じろげば、それを許さないとするように腰に回された手に力が入ったのが分かる。
「あ、の……っ」
眉間にしわを寄せて、なんだか怖い顔で私を見る卯月くん。
どうしたの?
どうして、こんなことをするの?
卯月くんにはちゃんと好きな人がいるんだよね?
それに、卯月くんは風紀委員長で、こういうことを取り締まる人なわけで……!
そう言おうとした。
このままじゃ、卯月くんの強い視線に涙が出そうだと思ったから、早く解放してほしくて。
なのに。
「────桃花」