いちごみるくと恋わずらい
なんだか少し辛そうな声色で名前を呼ばれ、またもや言いたいことは喉の奥に戻ってきてしまう。
そんな声で呼ぶなんて、ずるい……。
「……俺のこと、軽蔑してない?」
「……え?」
思いがけない言葉に、何の冗談だろうかと思った。
けれど、卯月くんの顔はとても不安げで、本心からの言葉だったんだと悟った私は、一体何を軽蔑されることを恐れているのか分からないまま、それでも卯月くんを安心させたくて、
「軽蔑なんてしてないよ」
と答えた。
すると、卯月くんは泣きそうな顔で「よかった」と笑う。
また知らない顔を見せられて、抵抗もできずに胸が鳴る。
「昨日はあんなふうにモカに迫っておいて、今日は仕事とはいえ男女交際取り締まってるなんて、絶対軽蔑されたと思った」
よりによって停学処分だしな、と自嘲気味に笑う。
「え。せ、迫って……!?」
「モカだって気付いてただろ、ちゃんと。……勘違いなんかじゃない。俺、モカのことが」
そこで、卯月くんはいちど言葉を切って、再び真剣な表情を向けてきた。
切なげな瞳。
少しずつ近づいてくる距離を私には拒むことなんてできない。