いちごみるくと恋わずらい
****
「えええっ!?じゃあ結局、チューもしてないの!?」
驚いたような声を上げた名桜ちゃんに、私は慌ててしーっと唇に人差し指を立てた。
誰が聞いてるか分からないのにそんな大声あげないでー!
────今は、放課後。
名桜ちゃんにはちゃんと話しておこうと思って、中庭でふたり、ベンチに座っている。
「当たり前だよ。だって」
「別に付き合ってないもんな、俺たち」
後ろから急に会話に割り込んできた声に、ドキッとした。
振りかえらなくてもそれが誰かくらいわかるけど、反射的に振り返る。
「卯月くん」
呼ぶと、嬉しそうに笑ってくれる。
それに私も嬉しくなって、思わず笑みがこぼれた。
それを見た名桜ちゃんが、「やだ、もう」とあきれたように笑った。
「これのどこが付き合ってないっていうのかあたしには甚(はなは)だ疑問だわ。そんな幸せオーラ出しといて」
「うらやましいのか?」
「べっつにー。あたしはモカが幸せならそれでいいわよ」
ふいっと顔を背けてそう言った名桜ちゃんに、「名桜ちゃん大好き!」と思わず抱きつく。
こんなに優しい人たちに囲まれて、私って本当に幸せ者だ。