天才極甘党系男子
中に入って窓側の席に座る。
メニューを開いて一番人気と書かれたケーキセットを頼んだ。
「最近どうなの?颯佑と」
「この前ね、すごく好きな人がいるって話をしたの」
「え?」
「まだ忘れきれてないから時間をちょうだいって。わたしも今のままで結婚は嫌だったからオッケーしたけどね」
「そうだったんだね」
そっか。
咲和はそれが誰なのか知ってるのか。
「咲和は知ってるよね」
「まぁ、うん」
「わたし、知らないことばっかりなの。
ほんとに知ってることは手の指で収まりきるくらい。指に入らないくらい知ってから結婚したいんだ」
「そうだったんだね。あっという間だよ、きっと」
「うん!」
「ただ、あいつの過去は壮絶だよ。
いつかは知ることになるだろうけど今じゃ想像つかないようなやつだったし」
「なにそれ」
「ひーみつ〜」
クスクス笑ってお水を一口飲む。
そして、薄い口を開いた。
「ただ、知らない方がいいことも多いよ」
「え?」
「もし、今少しでもいいなって感情があるならいろいろと乗り越えなきゃいけないことがあるかもね」
真剣な顔で言われて、なんとなくもやっとする。
聞かない方がいいのだろうか。
どうしたらいいんだろう。
「まぁ、澄乃なら平気でしょ!」