天才極甘党系男子
僕が寿美乃に会いに行きそのことを話すと、
「なんとなくわかってた」
なんて言った。
「わかってた?」
「だって、颯佑は跡取りだよ?」
「寿美乃…」
「あたしさ、これから自営業やるんだ。
きっと颯佑に構ってなんていられないし」
「それ、本心かよ」
「本心でもあるよ。
本当は嫌だよ?颯佑といたい。でもね?
わかってるの。きっとあたしたちこれからいい方向に行けるんだよ、別れるっていう選択をしたら」
「そんなことなんでいえんだよ」
「相手が颯佑だからに決まってんでしょ」
「は?」
「あんたはあたしが出会った頃より変わったよ、いい意味で。きっと新しい奥さんのことも受け入れられる。大丈夫」
僕はショックだった。
何も変わっていないのに。
子供のままなのに。
寿美乃は笑顔で僕を送り出そうとしている。
「大丈夫。なんとかやってける」
寿美乃はもう、意見を変える気持ちなんてなかった。
もう、決心していた。
だから僕は
「そうだね」
そう言って笑った。
それが最後に笑った時だったのかもしれない。