天才極甘党系男子



そして、あの時座った席にわたしたちは座る。


「診察券、出しに行かなくていいの?」


「いいんだよ、澄乃」


そういうと、わたしをまっすぐと見る。


向かい合って座るわたしたちはまるであの時みたい。


初めて出会った、あの時。


「澄乃」


「なに?」


「いっぱい傷つけてごめん」


たしかに。


颯佑と会ってから泣くことが増えたかもしれない。


「素直になれなくてごめん」


何も言わないで隠すからわからないことたくさんあったな。


「でも、僕から離れないでいてくれて、甘いもの作ってくれて、好きになってくれてありがとう」


「えっ……」


「澄乃」


「…っ」




「僕たち、結婚しよう」



「へっ……?」




「傷つけるかもしれない。泣かせて、素直になれなくて喧嘩もたくさんすると思うけど、これからも僕のために笑って甘いもの作ってほしい」




「もちろん……当たり前じゃん…っ」


「澄乃、幸せにするよ」


「幸せにしてっ」



わたしは泣きながら何度も頷いた。


そして、


家族に感謝して


颯佑にも、感謝して


「……お義父さんは…?」


「認めてもらえたよ。もう、呆れてたけどね」


そう言いながら笑う颯佑。


そんな颯佑への想いがどんどん大きくなる。



< 304 / 306 >

この作品をシェア

pagetop