天才極甘党系男子



「そうですね。
意識が戻り次第、僕から話しておきます」


聞いたことのある嫌な声でゆっくりと目を覚ます。


全身が鉛のように重たくて動かない。


酸素マスクも苦しかった。


たくさんの管と、ぴっぴっというわたしの心音。


この状況で、トラックに引かれたんだとすぐにわかった。


「渡辺澄乃(わたなべ すみの)さん」


「…ぁ」


声も出にくい。


「もう、大丈夫ですからね」


そう優しく笑うその人はさっきとは別人で。


わたしはただ頷いた。



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