ボディトーク
彼は中根 玲人(なかね れいじ)さん。
今や世界を飛び回る売れっ子フォトグラファーで、この業界にいて知らぬ人などいないであろう、存在だ。
入社2年目で初めて抜擢された大きな仕事が、中根さんの密着取材だった。
その時期の彼は、モデルから写真家へ転身して数年しか経っていなかっただけに注目度も高く、彼の記事が掲載された月の女性誌は、反響がとても大きかったことを記憶している。
中根さんは私の顔を見て、ニヤリと口元を歪ませた。
「じゃ、10分休憩するか」
中根さんは腕時計を見る。
「短い。30分頂戴よ、玲人さん」
陽希の言葉を聞いて中根さんは眉間に皺を寄せ、チッと舌打ちをした。
「あのな、お前も早く帰りたい、俺も早く帰りたい。…15分だな。0時45分撮影再開」
不満顔の陽希を物ともせず、中根さんはライターをカチカチ言わせながら、既に煙草を吸う体制に入っている。
「ほら、貴重な時間。……並木さんも頑張ってきな」
中根さんが色気のある笑みを漏らすので、私の体はその場でフリーズした。
心なしか、他のスタッフも皆ニヤニヤしている気がする。
何?この雰囲気……頑張るってっ何を?
「はいはいはい、み~ち~かさんはこっち」
「……ハル?」
陽希は私の問い掛けを無視し、私の腕を引っ張ってスタジオを後にした。
今や世界を飛び回る売れっ子フォトグラファーで、この業界にいて知らぬ人などいないであろう、存在だ。
入社2年目で初めて抜擢された大きな仕事が、中根さんの密着取材だった。
その時期の彼は、モデルから写真家へ転身して数年しか経っていなかっただけに注目度も高く、彼の記事が掲載された月の女性誌は、反響がとても大きかったことを記憶している。
中根さんは私の顔を見て、ニヤリと口元を歪ませた。
「じゃ、10分休憩するか」
中根さんは腕時計を見る。
「短い。30分頂戴よ、玲人さん」
陽希の言葉を聞いて中根さんは眉間に皺を寄せ、チッと舌打ちをした。
「あのな、お前も早く帰りたい、俺も早く帰りたい。…15分だな。0時45分撮影再開」
不満顔の陽希を物ともせず、中根さんはライターをカチカチ言わせながら、既に煙草を吸う体制に入っている。
「ほら、貴重な時間。……並木さんも頑張ってきな」
中根さんが色気のある笑みを漏らすので、私の体はその場でフリーズした。
心なしか、他のスタッフも皆ニヤニヤしている気がする。
何?この雰囲気……頑張るってっ何を?
「はいはいはい、み~ち~かさんはこっち」
「……ハル?」
陽希は私の問い掛けを無視し、私の腕を引っ張ってスタジオを後にした。