ボディトーク
引っ張られて連れて来られたのは、藤城陽希(ふじしろ はるき)様と書いた紙が貼り付けられている、彼の控室だった。
壁側には大きな鏡と衣装用ハンガー、部屋の中央にはソファセットが置かれているシンプルな部屋だ。
「……ごめんね、こんな時間に」
ハルは3人掛けのソファに座ると、自分の隣りをポンッと叩いた。
私は陽希に促された通り、隣に座ろうとしたものの、コーヒーテーブルの上のものに目を奪われた。
スタジオで見た時はキラキラした輝きしか分からなかったが、間近で見ると香水瓶はとても優美なフォルムだ。
大きな蓋の部分はダイヤのようだが、容器の部分は角度によって色が違って見える。
私は好奇心に駆られ、その瓶を手に持つ。
「美知佳さんもつけてみ」
私は誘惑に負け、そっと蓋を開けて自分の手首にチョンと香水を一乗せすると、今日のハルと同じ香りがしてきた。
「素敵な香りって、ハ、ハル、な、何してるの」
私が香水へ気を取られているうちに、陽希はシルク素材と見受けられるサラサラしたシャツのボタンを外していた。
そして香水が置いてあるテーブル目掛け、シャツを無造作に投げた。
上半身裸になった陽希は、鍛えられしなやかな筋肉の付いた体で、私に覆いかぶさろうとしている。
「ちょっと、ハルってば、ストーップ!!いきなり何なの?!」
私は咄嗟に陽希の胸との間に手を入れて、隙間を作った。
「ごめんね、時間が無いんだ。……美知佳さん、キスマーク付けて」
『ここ』と『ここ』と『ここ』ね、なんて言いながら、キスマークを付けてほしい場所を指定する陽希。
「はあぁぁぁっ?」
「だから、お願い聞いてって言ったじゃない」