ボディトーク
陽希が言うには、撮影を重ねていくうちに『最も色気のあるワンカット』と、リップマークを付けて撮影をしたものの、中根さんのリアリティが欲しいと漏らした一言で、急きょ本物のキスマークに変更して撮り直しすることになったらしいのだ。

「でもさぁ女性スタッフに頼むのってセクハラだし、男なんてもっての外だし。美知佳さんが来てくれて良かった」

道理でスタッフさん達がニヤニヤ笑っていた訳だわ。

絶対に私、わざわざキスマーク付けに来た好色な女って思われてる。

ああ、超恥ずかしいっ。

「そんなことで呼ぶなんて、信じられないっ」

「俺には大真面目な話し。それにもう12分しかない」

「そんなの、心の準備が出来ないってば!!」

いきり立つ私を気にすることもなく、陽希は胸元をずいっと鼻先まで近付け、距離を詰める。

次の瞬間には、陽希に抱きすくめられていた。

「美知佳さんは、俺にキスマークどころか爪も立てやしないよね。……俺は滅茶苦茶したくなるけど」

陽希の指はいつの間にか私の胸元を滑り、私のブラウスのボタンを3つも外していた。

「ハル?」

陽希はただ一言「レッスン中」とだけ発すると、突然私の胸元に頭を下げて唇を這わせ始めた。

「ハルってばっ」

彼は私の胸の谷間辺りに顔を埋めると、ジュッと吸い付いてくる。

「キスマークの見本。ほら簡単でしょ」

陽希は小さく微笑みながら、私のブラウスの中に両手を入れて、優しく背中を撫でる。

その表情は、まるでさっきのヴァンパイア陽希。

どうやら陽希は、上手く私を乗せようとしているらしい。

その意図に気付き、私はヤケクソ気分で陽希の首筋に唇を寄せた。

「ダメだよ、美知佳さん。そんなんじゃ痕なんて残んない」
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