黒き時の物語
唖人
二人は城に向かって
歩いていた
「あ、クローズたい焼き
買ってっていいか?」
ふと足を止めそんな事を言うキル
どうやらたい焼きが相当
好きなようだ
呆れ顔で頭をかきながら
「ホント好きだな」
と言いキルの後を
ついていくクローズ
お目当てのたい焼きを買い
再び歩き出す二人
「俺にも一個くれよ」
クローズは袋に入ったたい焼きを
指差し、手を出した
「お前も好きなんじゃねえか」
笑いながらたい焼きを
一つ渡すキル
「しっかし何だったん
だろうなあいつら」
キルはたい焼きを
食べながら呟いた
「とりあえずジジイの結界も戻った
みたいだし話聞いた方が早いだろ」
軽く手を振りながら答えるクローズ
ところでこの王国
円で形付くられていて
中央に城があるという
珍しい形の王国である
城を囲う門は東西南北に
別れており
街も大きく分けて四つに
わかれている
キル達は南方の街から中央の
城へと向かっている最中なのだ
王国自体はそこまで広大でなく
王国そのものが大きな城のような
物だと考える方がいいかもしれない
――――――
「入るぞジジイ」
城の中に到着した二人は
国王の部屋のドアを開いた
「来たか…敵襲者の殲滅
感謝する」
国王なのだから一番偉い筈だが
深々と頭を下げる国王
こういった行動が民の信頼に
繋がっているのだろう
「いいって別に…話はお礼って
訳じゃないんだろ? 」
軽く手を振りながら聞くキル
部屋の入り口に立っている
兵士は国王に対しジジイと言ったり
タメ口を聞いていることに
苛立ちを見せるがこの二人
どうやらそれだけの存在らしい
「うむ…今回の敵襲者とキルが
狙われた事についてじゃが…」
国王は人数分のお茶を
入れると席に着いた
同じくキル達も向の席に着く
「恐らくこの二つの奇襲は
別物と見ていいじゃろう」
二つの奇襲とは
骸骨達とミラと名乗った
者の事だろう
「どうゆうことだ?」
キルは首を傾げながら訪ねた
「南方の街に攻めてきた
見たことも無い敵達…そもそも
骸骨が動き、攻撃してくるなど
他の王国でもありえん話じゃ
だが結界を破り進入してきた
以上、只者達ではないじゃろう」
そんな奴等をあっさり
殲滅したのがこの二人な訳だが
「確かにオカルトが過ぎるとは
思ったよ…あいつらはおかしい」
クローズはそう言って
お茶を一口飲んだ
「あやつらが何者なのか
一体何の命令を受けて
動いていたかはわからん…
恐らくあやつらは
カラサント以外の王国も
同じように攻めるじゃろう」
「この世界とはまた違った
存在ってか?どこのファンタジーだ」
キルは呆れたように言う
「じゃがそんな事を言えば
おぬしも同じような者だろう」
「確かに俺は普通の人とは
違うがあんな気持ち悪い
見た目はしてねえぞ?」
そんな会話をする二人だが
先程の戦いで出した焔の事だろうか
「確かにな…おぬしらが
持っておる力…異を持つ人…
唖人(あじん)は人の形をしておる」
「形じゃなくて、ちゃんと人だ」
″唖人″
どうやらキルやクローズは
そう呼ばれる特異体質を持つ人らしい
「唖人が存在する以上
骸骨が動いても不思議では
無いのがこの世界じゃが
目的がわからぬ…」
国王は頭をかきながら下を向いた
「一先ず骸骨達はいいとして
俺を狙ったミラって奴はなんなんだ?」
キルが聞きたかったのは
そちらの話だったのだろう
「それについてじゃが…
お前達に話さなくては
ならん事がある…」
「?」
キルとクローズは国王を見た
「そう…唖人について…
おぬしらが一体どういう
人間なのかを話さなくてはならん」