〜加茂の流れに〜
終 章
ユーミンの歌は続く・・・

"誰か"

"優しく私の"

"肩を抱いてくれたら"

"どこまでも遠い所へ"

"歩いてゆけそう"


講演会は盛況だった。

三浦綾子は北海道旭川市出身のクリスチャン作家。

「氷点」・「塩狩峠」などが代表作。

「信仰」についての話だった。

教会は加茂川沿いにあった。

帰り道Nさんが言う。

「遠くにいる人は愛せるけど、近くにいる人ほど愛せない・・・」

「そう思わない?」

その時はよく理解できなかった。

年を重ねた今はその意味がよくがわかる。

"汝の隣人を愛せよ"

「イエス様って凄い人だね・・・」

河原をゆっくり散策する。

新緑の柳が風に揺れ、若葉の香りが漂う。

Nさんとベンチへ腰掛ける。

加茂川の流れは穏やかで澄んでいる。

Nさんが加茂川を覗き込み、
「あっ、お魚」
と、子供のようにはしゃぐ。

水面で小魚が群れをなして泳いでいる。

ちょっと間が空き、
Nさんは声を落とした。

「・・・私ね、求道中なの・・・」

Nさんは洗礼の準備期間中だった。

独り言のように呟く。

「きょうのお話で決心がついたわ・・・」

それから程なくして、Nさんは洗礼を受けた。

Nさんにとって"誰か"はイエス様であり、「信仰」だったのかな。

・・・

"どこまでも遠い所へ"

"歩いてゆけそう"

・・・

私もちょっとだけ聖書を開いてみた。

風薫る5月。

今頃になるとNさんの事が思い出される。

京都はもうすぐ「葵祭」だ。


終わり
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