陽のあたる場所
「どこ買いに行く?」
「どこって?どこに行くかってこと?」
「そう。」
「私、お店わからないから。」
「渋谷初めて?」
「初めてじゃない。この前ケンちゃん探しに来た。」
「あぁ、あれが最初?」
「うん。」
「それにしても、俺があそこにいるってどうやって調べたの?」
「お父さんに、教えてもらった。」
「君のお父さんて、どんな人?なんで俺のこと知ってたのかな。」
「お父さんは、、、殺された。」

俺はヒナタの苦しそうな表情を見て、これは冗談なんかじゃないと思った。
それでも、まるでなんて答えてあげればいいのか、よくわからなかった。

「正確に言えば、自殺だった。
、、、お父さんは、お仕事のことで、とっても苦しんでいた。
ケンちゃんの話を聞いたのは、お父さんが死ぬ前の日のことだった。
私に分かるのはこれくらい。」
「お父さんの仕事って何してたの?」

俺は緊張して、体が堅くなっているのを感じた。
何かヒナタの『お父さん』について、思い当たる節がないでもなかった。

「お父さんの仕事はよくわかんない。難しいお仕事みたい。」
「そっか。」

なんだかほっとして体の力が抜けた。

「109って知ってる?あそこ行こうか?」
「可愛い?」
「わかんねー。俺も行くの初めてだから。」

俺たちは、109に向かった。

109とは渋谷にある、女子高生やギャル御用達の洋服やのテナントがぎっしり入った8F建てのビルだ。
渋谷の交差点を渡ると正面に銀色の安っぽい未来をイメージしたような丸いデザインのビルが見えてくる。
大きな109とかたどられた赤い看板が上のほうについている。

俺は、男だから一度も入った事はなかったが、よく109前を通るので存在はかなりなじみ深い。

渋谷に歩いている女のコはここに入った事ないコはいないと思われる。
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