二重人格の彼
「なんなの?そいつ!」


早苗が話を聞くなりそう言い放った。


「まぁまぁ、早苗少し落ち着いてよ」


「落ち着いてられっか」


早苗は今にも麻実さんを殴りに行きそうな勢いで……


「じゃあこの目で確かめてみる」


「何を確かめるのよ」


「決まっているじゃない。本当に付き合っているのかだよ」


そう言ってあたしの腕を掴み歩き出した。


おいおい、ちょっと待たんかい!!


今行ってもあたしが凹むだけなんですけど。


という心の叫びは当然早苗に届くわけなく……


「よし、3年のクラス到着」


3年生の階に来てしまった。


廊下を歩いてると先輩発見。


けど、麻実さんと一緒にいる。


「本当にあれ付き合ってるの?」


早苗が先輩たちを指さし疑い始めた。


「そうみたい。早苗も言ってたじゃん」


「噂で聞いただけよ」


麻実さんが先輩に何かを話しかけていて、それを先輩は微笑んで話を聞いている。


そんな姿が苦しくて苦しくて、見たくない。


そう体が反応した。だからあたしはうつむいた。


すると3年の男の先輩たちが、


「立花ってやつ、また隼人を独り占めしてるよ」


「また?隼人のやつ好きな奴いるんだろ?」


「そうなのか?誰?」


「わかんねぇけど…」


という会話をしているのを聞いた。


先輩の好きな人は麻実さんだろう。


先輩の本性を知っているのは、あたしと麻実さんだけ。


あたしは鬱陶しいって思われていたから。


あたしのことは好きじゃない。


……人生初の恋は、とても悲しい片思いだった。


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