二重人格の彼
恐怖症
「神田ーー!」
宮崎が走ってあたしのもとへやってきた。
いつも思うけど、あたしの名前を叫びながら来ないで欲しい。
「何ですか?」
「ちょとやってほしいことがある」
……これを引き受けたあたしが馬鹿だった。
宮崎に頼まれたのは資料の整理。
なんであたしはよく頼まれごとをされやすいんだろう。
資料室に行って心の中で文句を言いながら整理を始めた。
やっと整理が終わり、外を見ると真っ暗だった。
この真っ暗な道を一人で帰るのか……
そう考えてると、ドアが開く音がした。
宮崎かな。
「……なんだ、お前か」
先輩だった。
「なぜ先輩がここに?」
先輩は眉間にしわを寄せながら、
「学校の点検だよ、ここだけ電気が点いていたから来たんだよ」
あたし、相当嫌われてるな。
「そうですか、すみません」
あたしが謝るとさらに先輩の顔にしわがより、
「聞きたいことがあるんだが」
と低い声で言った。
「なんですか?」
「お前、麻実に嫌がらせしてるんだってな」
「へ?」
嫌がらせ?なんのこと?
「しらばくれんのかよ」
すぐに麻実さんの嘘だと思った。
「あれから、1回も麻実さんとは会っていませんが」
あたしがそういうと先輩の顔が歪んだ。
「じゃあ麻実が嘘ついたってことかよ」
先輩の悲しそうな顔をみたら
「すみません、嘘です」
「は?」
「もうしません」
あたしが嘘をつかなきゃ。
「なんでそんなことをした?」
なんて答えよう。
兎に角嘘を言おうとしたら、電気が急に消えた。
「……電気、消えたな」
あたしの中でプツンと何かが切れた。