恋の授業。




怒らせちゃったのかな………



朝の電車の中、ワタシは1人でいつもの車両に乗って音楽を聴いている。
相変わらずの人ごみの中で、昨夜のことを考えていた。



結局、森川君は納得してくれたのか。
ただ我慢させただけなんじゃないのか。


そんな事が頭をグルグル回って、夜はほとんど眠れなかった。



はぁぅ…辛い…



電車の心地良い揺れと、人ごみに埋れてるせいで誰にでもよっかかれる状態に睡魔が襲ってくる。


立ったままウトウトしていたワタシは、自分の頭が船を漕いでカクン!と右にいる人にぶつかった衝撃でハッと目を覚ました。



あっ……



謝るべきか、と考えながら右の人を見上げると………



……………っ!?




それは、ホクロメガネだった。



あ、あっ、わっ、ほ、ホクロメガネ…



口は驚いたように開けたまま声を出さずに凝視していると、懐かしい感覚が一気に襲って来た。



睡眠不足でフラフラな上に、なぜか拍手喝采の心臓がワタシをクラクラにする。



この匂い……。
この目…。



レンズの隙間から見下ろす目は、暗い顔に似合わず優しい。



ギューーーっと心臓を鷲掴みにされたかと思うほどに息苦しくなって…

鼻の奥がツンと痛い。



話したいけど、話せない。

頼りたいけど、頼れない。

縋りたいけど、縋れない。



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