恋の授業。



うわっ、なにこれヤバっ…



ホクロメガネを見上げていた目から何かが零れそうになった瞬間、慌てて下を向いた。



その動きだけで目から落ちた何かがブラウスにスーッと跡を付けた。



ばれなかった…よね………



ホクロメガネを見ただけで泣くとか、ほんとどうかしてる。
マジ寒いし!



自分を叱咤しながら、それでもまだ零れようとするそれを必死で食い止めていると、視界の中にいつか見たグリーンのチェックが入った。



エ……。
バレ…てる………。



期待は一気に裏切られて、羞恥で全身が熱くなった。



そう言えば、前にも泣いたことがある。

その時に渡されたのと同じハンカチをスッと出してくるホクロメガネは、寒いくらい紳士的だ。



無意識に手に取ると、電車は調度横浜に着いた。
押し出されるようにして降りた時には、もうホクロメガネの姿はなかった。



これしか持ってないのかな…



そんなはずないとわかっていながら、この偶然を笑いのネタにせずにはいられなかったんだ。



まったく、変な偶然!



ハンカチは使わずに、鞄にしまった。



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