恋の授業。
「どうして、って…」
どうして、って言われたって。
ワタシはワタシなりにこれが正しいと思ってるんだもん。
「波風立てずに生きていく為には、必要なことでしょ。」
「……」
「第一、ホクロメガネさんだって本音と建て前、使うでしょ。」
「……」
「……」
この沈黙に先にいたたまれなくなったのはワタシだった。
何に対して焦っているのか自分でも解らなかったけど、ホクロメガネを責め立てるように感情が飛び出していく。
「ワタシだって…!イヤな思いはしたくないし、嫌われたくないしっ……!
とにかくっ、上手く人付き合いして上手く生きていきたいって思うんですっ、おかしいですかっ?!」
数秒後、ハッと我に返る。
残念だけど、必死な顔をしているんだろう…
目が、熱い。
こんな情けない顔を見られたら、きっとまた子ども扱いされてしまうと思うと、下を向いて隠すしかないしだいたい……
ここまで取り乱してしまったのも、全部ホクロメガネのせいに思えて仕方がない。
なんでこんな…
なんでこんなことになってるんだろうワタシ……
もうヤだ…
「本音と建て前、と言うことは、君にもまだ本音があるということですね?」
突然聞こえた優しい声に思わず顔を上げると、まるで小さい子を見るような顔でこっちを見ている。
いつだったか電車で見たときと同じ、優しい目だ。
ワタシはなんとなく、その顔にホッとした。