恋の授業。




森川君の肩越しに見える景色が滲む……

背中に回していた手は、いつの間にか力なく落ちて冷え切っていた。



なんで、どうして、また…



それだけが頭の中をぐるぐる回って、とてつもなく大きい後悔が心臓を潰して痛い。



…痛い。
いたい、いたい。



「でもじゃあ、俺にヤキモチ焼いたりする?」



え……?



「俺が予備校で誰と何話してるんだろうとか、思う?」



「……」



「女とメールしてないかなとか、気になる?」



せき止めていた何かが壊れたように次から次へと続く言葉に、ワタシは何も返すことができなかった。

そんな風に、思ったことがなかったんだ。



「ほらね…。全部、俺だけ。」



なんで…そんなっ



「なんでっ?なんでそんなこと言うの?ワタシは!ワタシは…」



滲んでいた景色が一瞬ハッキリしたのは、溜まっていた涙が零れたからだ。



「ワタシは、それでも森川君が好きだよ…?」



もうそれ以外に伝わって欲しいことなんてなかった。



< 270 / 324 >

この作品をシェア

pagetop