恋の授業。



せめて写真だけでも…



いい歳した男が好きな女の写真だけでも、なんて馬鹿過ぎるだろ…

だけど…



雑誌の中に空を見つけた時は、呼吸を忘れるほどドキドキした。



この切ない表情は、“森川君”を想っているんだろうか。


ふと目に入った文字。

“川原 空”

そら?だから『くーちゃん』なのか…。

こんなに愛しいと思う相手の名前を知らなかったなんて、不思議な気分だった。


穴が空くほど見回した俺は、
元カレを想う空でもいい…
それでもいいから、と、爪痕がつくほど握りしめた本を持ってレジへ向かった。



後から冷静に考えると、まるでストーカーのような自分の行動に嫌悪感でいっぱいになり、本棚の奥にしまったのだ。


そして…もしまた会うことができたらその時は、
しっかりと気持ちを伝えようと決めた。



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