恋の授業。




「はぁー」




空をこの手につかんで一月。


“毎日会いたいと思ってる”
なんて大胆な告白を受けておいて
ここ10日間会えていない。



ハンドルをきりながら時計に目をやると、もう10時だ。



この4月から新1年生の担任を受け持ったせいもあって、仕事の量が半端ない。

本当なら平日でも空と過ごしたいところだけれど、全く時間がない。
せめて連休は休めるように仕事は終わらせておこう。




それにしたって『空不足』だ。
ここまで落ち込むのは久し振りだなんて自嘲しながら駐車場に着くと、車輪止めに何かが見える…



「…空?」



小さくなって座っているそれは、俺の車に気が付くと満面の笑みで駆け寄って来る。



「お帰りなさいっ!」



慌てて降りると、嬉しそうに跳ねながら笑っている。



無自覚なんだろうけれど、こんな顔をされたら堪らなくなる。


この場で抱きしめてしまいたい衝動を何とか抑え、大人としての行動をとらなければ。



「いつからいたんですか?危ないから1人で出たらダメだと言っているでしょう…だいたいもう10時なんですよ?」



…しまった………。



さっきまで向けてくれていたあの笑顔が完全に曇ってしまった。




「ごめんなさい…。どうしても、顔が見たくて。」




馬鹿だ……
俺を見つけただけであんなに喜んでくれたのに。



“大人の行動”なんて、本当は無理だ。
理性に理性を重ねてなんとか演じているけれど、本当の俺は空に振り回されっぱなしだ。



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