恋の授業。
君の時間と僕の時間
何かと忙しい綾子とは久しぶりにゆっくりできたのもあって、カフェを出たのは予定より遅かったけど、とっても充実した気分だった。
やっぱり女子はしゃべってストレス発散だよねー!
自然と口角も上がって、空を見上げる。
あの桜並木は葉っぱが増えて、これから来る夏を連想させる。
すぅーーーと空気を吸えば、春の何とも言えない清々しさが感じられてたまらない。
いつもの曲がり角に来たとき、ハザードランプを点けて止まっている車から、1人の男が降りてきた。
特に気にしないで通り過ぎようとした時
「お嬢さんっ」
そう聞こえたような気がしたけど、ワタシの警戒心がビンビンに反応して競歩並の速さで逃げ出した。
お嬢さんって古っ!
あーやだやだ。
すると急に腕をつかまれた。
勢いよく進んでいた弾みで、後ろによろけてしまう。
「ひゃっ!……っ!」
驚いて小さく悲鳴をあげたと同時に、腕をつかんだ男の胸元に頭からダイブしていた。
あれっ…この、匂い……
…?
匂いに反応して男の顔を見上げてみると
それはやっぱり、ホクロメガネだった。