心の交差点
ナオミ!?

シンジは立ったまま通りすぎることもできず、ぽかんと立ち尽くしてしまった。

悪態連中の中に、妻のナオミがいる。
しかも、泣きそうな顔をして。

ナオミはうつむいていたので、実際のところ、顔まで見えたわけではなかったが、
ナオミがどんな気持ちでいるかは、手に取るようにわかった。

友達ができたの、だからごはん食べて帰ってくるわね。
妻の言葉を鵜呑みにして、喜んでいた自分はなんだったのか。

いつも新聞ばかり読んでないで、たまには顔を向けて話を聞いて。
珍しく妻が声を荒げたのは、友達ができたことを喜んでほしかったからではなく、
寄り道せずまっすぐ帰ってきて家族のために食事を作れと言ってほしかったからではなかったのか。

どうこの場を切り抜けたら良いかわからず、少し薄くなった頭に手をやったシンジは、頭に伝票が当たったことに気づき、レジへと向かった。
< 8 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop