秘密
そう、母上様。
このピンクのフリフリワンピースと、パニエとパンプスという、悍ましい物を置いて行ったのは、俺の母上様だ。
着ない事くらい、分かって居る筈なのに、着せたがる。
迷惑この上無い。
いい加減飽きろよ。
俺は、溜め息を一つ吐き、クローゼットの下のタンスから、ミ●ノのハーフパンツを出して履いた。
それから、ハンガーに掛かった白のパーカーを、カッターシャツの上から羽織った。
コンコンッ
丁度良いタイミングで、ノックの音がした。リズムからして、白部だろう。
棗「どーぞ」
白「失礼致します。棗坊っちゃま。
御夕飯をお持ちしました」
棗「あぁ、ありがと」
「「失礼致します(まーす!!)」」
と、料理人の渡辺と、その補佐?の吉口少女が入って来た。
棗「おぉ、吉口。
何時も元気だなぁ」
吉「当たり前田のクラッカーですよ!」
棗「古いぞ吉口。
で、今日は何枚割ったんだ?
100枚か?200枚?もしや、300枚か!」
この、吉口少女は……本当に言いようの無い…………
…………疫病神なのだ。
何処が問題かと問われれば、全く補佐の仕事をしない。いや、出来ないんだ。
簡単に言うと、渡辺の邪魔をする。
卵焼きを作らせたら、何故か紫色の物体ができ、皿を洗わせれば、洗うお皿の量より多く割れる。
本人は、態とでは無いし、親に捨てられて身寄りが無い為、クビにも出来ない。
疫病神の究極系の異名を持つ娘だ。
まぁ、空手と柔道、合気道が物凄く強い為、ボディガードには売ってつけなのだが…………
…………やはり、12歳の女の子だ。年頃の女の子を、ボディガードにするのは気が引ける。
単に俺は、俺の代わりに女の子を満喫して欲しいだけだ。