秘密
*∥第二章∥*
"An again"
空が紅く染まるのを、ジッと見ていた。
もう夕方か……
一磨は起きただろうか?
あの手紙を読んだあいつは、怒るだろうな。
はぁ…………。
それにしても、辛いな。
女を完全に捨てるというのは、一磨に恋したあの気持ちも捨てないとならないのか。
黒い車の中、肘を突いて外を眺める。
日が暮れるのは早いモノで、もう群青色が迫っていた。
「日が暮れるのは早いな…………。
残酷な位に早い。そう思わないか?
……………………白部」
「はい。そうですね、棗様。」
運転しているのは、白部。
スーツ姿の棗は、後ろに座っている。
「棗様。
本当によろしいのでございますか?」
「その事は気にするな。
罪を被るのは、俺だけで十分。
それに、お前は女だ。その穢れの無い手を、真っ赤に染めて欲しかねぇし。
どうせ染めるなら、好きな男の色で染めろよ」
「…………分かりました」