秘密


「ただいま」



そう言って、玄関に入った。

いつ来ても変わらないな。この独特の雰囲気は。



奥へ行き、久々の父の部屋に入る。



「失礼します。
棗です。ただいま戻りました」


「棗か。入れ」


「失礼します」



入った先にいたのは、変わらない父の姿だった。




「久しいな、棗。
元気にしていたか」


「あぁ、おかげさまでな」


「それで、今日来た理由はなんだ」



父は、俺の目を真っ直ぐ見ていう。

チッ………俺はこんな親父が嫌いだ。何でも見透かした様な目で、見る。この時の親父が1番嫌いだ。




「一磨の記憶が戻った。
俺は、この家継いでやる。覚悟を決めた」


「そうか、そうか。
遂に決めたか………
ハッ……お前にしてはいい判断だ」


「でだな、親父。
今度の奴、俺もついて行く」



今度の奴とは、
悪名高き鹿原組の組長暗殺だ。


< 87 / 113 >

この作品をシェア

pagetop