満たされる夜
♢third story―――伊丹
「やっぱり私、あなたとはお付き合い出来ません」
「はぁ、そうですか」
面倒臭い。
何がって、今この瞬間の面倒臭さったらない。
「そうですかって、他に言うことないんですか?」
「ありません。何かあるんですか?」
そもそも付き合うかどうかなんて考えてもいなかった。
相手の女はバツイチの30代前半。
部長の知人の娘らしく、食事だけでもと言われて先週末に3人で食事をした。
離婚してから一向に恋人が出来ないことを周りが気にしていて、部長が独身の俺に勧めてきたわけだ。
そんなこと言ったら、俺なんてもう何年相手がいないのか…。
「あれから一度も連絡してくれなかったじゃないですか」
「仕事が立て込んでいるもので」