満たされる夜
翌朝、いつもより早く会社に着いてしまった。
昨日はずっと課長のことが気になって寝つきが悪く、目が覚めたのも早かった。
もし今日休みなら、営業部の課長に家を知っているか聞いてみようか…。
そんなことを考えながら課のドアを開けた。
「課長…」
課長は席に着いて、黙々とキーボードを叩いている。
黒縁の眼鏡の奥の目は、真剣にパソコンの画面を追っていた。
私がデスクの前に立ってようやく目が合う。
「おはようございます」
「田崎か。珍しく早いな」
二人きりの空間はとても静かだ。
空調の音と、キーボードを叩く音だけがする。
「課長のことが気になって。もう体調はいいんですか?」
「ああ、悪かったな。迷惑かけて」
思わず課長の額に手を伸ばす。
熱はないようだ。
課長は私を睨みつけるように、強い表情をしていた。