満たされる夜
「お疲れさまでしたー」
金曜日だというのに残業になってしまった。
もっとも早く帰ったとしても、やることなんてないんだけど。
一人、また一人仕事を終わらせて帰っていく。
課長のデスクに目をやると、提出された書類に目を通していた。
気がつけば残っているのは私たちだけ。
プリントアウトしてまとめた書類を手に、課長のデスクに向かう。
「終わりました」
「お疲れ」
「課長はまだ帰らないんですか。また調子悪くなりますよ」
私を見ることもなく黙々と書類に目を通している。
課長の髪の毛は真っ黒で、真っ直ぐだ。
少し硬くて、でも指通りは良かった。
ぼーっと課長を見ていると、不意に顔を上げた課長と視線が合う。