満たされる夜



「お疲れさまでしたー」


金曜日だというのに残業になってしまった。
もっとも早く帰ったとしても、やることなんてないんだけど。


一人、また一人仕事を終わらせて帰っていく。

課長のデスクに目をやると、提出された書類に目を通していた。

気がつけば残っているのは私たちだけ。


プリントアウトしてまとめた書類を手に、課長のデスクに向かう。


「終わりました」

「お疲れ」

「課長はまだ帰らないんですか。また調子悪くなりますよ」


私を見ることもなく黙々と書類に目を通している。
課長の髪の毛は真っ黒で、真っ直ぐだ。

少し硬くて、でも指通りは良かった。

ぼーっと課長を見ていると、不意に顔を上げた課長と視線が合う。

< 37 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop