満たされる夜
課長の腰は小刻みに震えていて、ぐっと力を入れて息を殺しているのが分かった。


「め…ぐみ、もういいから…」


荒い息と共に絞り出すような掠れた声に名前を呼ばれて、ソコから口を離して課長を見上げた。
今、私の名前を…。


「課長、私の名前…」



課長は体を起こすと私の手をつかんで引き寄せられて、そのまま抱きしめられた。
汗ばんだ体と、ドクドクと速い鼓動。

私の頭を撫でてくれ、頬にキスをされる。
顔を見ると、いつもの恐い顔とは正反対の優しい顔をしていた。
まるで愛おしいものでも見るかのような。


「白状する。寝不足だったのは、このベッドに入るとあの夜のことを思い出すからだ。ソファにいても、めぐみの姿を思い出す」


課長は私の服を丁寧に脱がせてくれる。壊れものを扱うかのように。
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