満たされる夜
課長は私の胸に痕をつける。
小さくて濃い、すぐには消えそうにない痕を。


「あの日、キスマークをつけたのはどうして?」


課長はバツが悪そうに俯きながら、私の腰を引き寄せる。
昂りは熱を持ったまま、私の下腹部に当たる。


「それは前にも言った。俺が抱いた証拠だ。惚れた女をそのまま帰したくなかった」


惚れた……?課長が私に?

信じられなくて課長をじっと見つめると、今まで見たことがないくらい優しい、どこか照れているような笑みを浮かべていた。


「相手の男にたまらなく嫉妬した。俺を求めてくれるめぐみに応えたくて、何より俺が止まらなくて…そのまま抱いてしまった。もう忘れてたんだけどな、男としての自分は」


何かを思い出しているように苦笑している。
きっと昔のことを思い出しているのだろう。
立場は違えど、私も課長も同じような思いをした。
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