満たされる夜
昨日、二次会が終わって解散したとき。
私と課長は同じ方向で、タクシーをつかまえるために歩いていた。
フラフラと歩く私を課長が時々腕を引っぱって、真っ直ぐ歩かそうとする。
だけど頭は揺れるし、体の芯まで回ったお酒のせいで気持ち悪くなってしゃがみ込む。
「おい、お前の家はどこだ。タクシーに放り込んでやる」
しゃがみ込んだ私の頭上から、苛ついているであろう課長の不機嫌な声が降ってくる。
「気持ち悪い」
「お前、付き合ってるやついないのか。いるなら迎えに来てもらえよ」
付き合ってるやつ…。
アイツは無理だ。無理!
「無理!無理ですよー。不倫だもん」
「はぁ?」
呆れたような課長の声。
記憶はここで一度途切れていて、次に憶えているのはこの家に入ったときだ。