満たされる夜
「愛してるよ」
思いもかけない言葉に、私はまたビックリしてしまう。
照れているわけでもなく、真面目に、私の顔をしっかり見て言ってくれている。
「俺はめぐみを知るまで、男の自分を忘れていた。昔からこんな堅物なわけじゃないが…」
「私はどんな課長も好きです。こういう普通の課長も、仕事してるときも、私を愛してくれるときの課長も」
私たちはただの上司と部下で、お互いがどんな人間かなんて上辺だけしか知らなくて、体から始まった。
満たされない私の心を、この人は愛おしそうに抱いて満たしてくれた。
「めぐみ。ずっと俺と一緒にいてくれるか」
「はい。だって、前に約束したでしょ?私が課長を満たすって」
お互いでなければ満たせない。心も、体も。
「だけど今日はクリスマスだから、先に裕二が私を満たして」
ライトアップされたスカイツリーをバックに、私たちはもう一度キスをした。
End