満たされる夜
フラフラとした足取りのまま、課長に腕を引かれて玄関に入るとパンプスを脱ぎ捨てて、リビングに連れて行かれた。
すぐさまソファに横になる。
白い、大きなソファ。
このままぐっすり眠れそう…。



「おい、相手の男は会社の奴か」


「課長、勘いい!アレですよ、営業にいるでしょ、遠藤ってやつ」


営業成績が良くて、明るくて人当たりのいい男。私より2つ上の28歳。
3年付き合った私を裏切って、取引先の重役の娘と一緒になった。

それでもずるずると体の関係だけが続く。
やめたいのにやめられない。
愛情もないのに、次の恋愛に踏み出せない。
もう傷つきたくないから。

だから満たされない心を満たそうとして、惰性で抱かれる。
けれど満たされるどころか空っぽになっていくばかりだ。

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