満たされる夜
焼き上がったものに粉糖をまんべんなくかけて粗熱を冷ましてから、ラッピングをして課長の家に向かった。
電車を乗り継いで一時間ほど。
課長にプライベートであげるのは初めてだし、本当は直接渡せたら良かったんだけど。
先に予定を確認しなかった私のミスだし、来年は事前に聞こう。
ドアノブに袋をかけると、不器用なこの家の主が喜んでくれることを願いつつ家を後にした。
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週末の上にバレンタインということもあるのか、街中はカップルが多い。
若い―――たぶん中学生くらいの初々しいカップルもよく見かける。
私は遠藤にあっさり裏切られてから課長と関係を持つまで、カップルたちを単純に幸せそうだとは思えない期間があった。
今は違うけれど。