蝶のように花のように
使用人として
大伯父様のお屋敷には多くの使用人がいる。

中でも最も身近に使えて日常のあれやこれを担っているのがフットマンと呼ばれる使用人で、さらにもフットマンらの指導や執事の補佐を行うのがファーストフットマンと呼ばれる役職だ。

望月さんも、その一人というわけだった。

お屋敷での滞在中、私は与えられた豪奢すぎるゲストルームを抜け出して頻繁にサロンに通った。
そこでは大伯父様同様お茶を愛する人たちが集い、優雅なひとときを過ごしている。

ティーパーティの数日後、訪れた私を一目見て望月さんはにこやかに微笑んだ。

『おや、またいらしたのですね、お嬢様。』

あんなに沢山のゲストがいたというのに、ほんの少し言葉を交わしただけの私を覚えていることに驚いた。おそろしいほどの記憶力。そして。

『先日お会いした時とアイメイク変えられました?』

凄まじい観察力。
さらに。

『初めてお会いした時から思っておりましたが、お嬢様の黒髪は本当に美しくていらっしゃる。私なんて…毎日自分でコテでセットしているのですが髪が傷んで仕方がないのです。良いケア方法がございましたら知りとうございます』

女子顔負けの、女子力。

そしてほんの少しおしゃべりするだけで、望月さんは私が外国育ちということすらすぐに見抜いてしまった。ただし、この屋敷の主の姪の娘だと告げた時には驚いていたけれど。

『お嬢様は、本当に当家のお嬢様でいらしたのですね。ようこそ、おかえりなさいませ』



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