バターリッチ・フィアンセ
「……お姉様、お迎えが来てくれましたよ」
そう言ってから私は一歩身体を横にずらし、姉と義兄を対面させた。
「琴絵……」
「陽一さん……! どうしてここが……!」
見つめ合う二人はまだぎこちなさが残っていて、私はとりあえず義兄のぶんのコーヒーを淹れようとキッチンに引っ込む。
すると後ろから誰かに肩を叩かれ、振り返ってみると昴さんがテーブルを指さしこう言った。
「……よく見てみ。俺がちゃんと人数分入れた」
「え……?」
そう言われてみれば、テーブルに出ているカップは、確かに五つ。
でも、どうして……?
「織絵、さっきコソコソ電話してたろ。たぶん琴絵さんのダンナに連絡してるんだろうなと思ったから、そろそろご登場かなと思って」
……すごい観察力と推理力。
私が感心していると、昴さんが冷蔵庫から、ラップのかかった一つのお皿を取り出した。
「さて……これで元通りになるといいけど」
お皿にちょこんと乗ったサンドイッチは、さっき私たちが食べていたものとはまた具が違うように見えた。
昴さんはそのお皿を持って義兄の元へ近づくと、こう言った。
「――これ、琴絵さんがアンタのために作ったタマゴサンド。テーブルにも色々ならんでるけど、これだけは俺が手伝ってないんだ。
……理由は、食ってみればわかる」