バターリッチ・フィアンセ


「昴さん……はぐらかすのはいい加減にしてください」

「ちょっと待てって。……何の話?」


軽く受け流そうとしているのがばればれの、ぎこちない笑顔で昴さんが言う。

そして私の目の前を横切り、服を取りにリビングへと移動してしまう。


どうしても……私に話す気はないのだろうか。

私はずっとずっと聞きたいけど聞けなかったことを、今やっと受け入れる準備ができたというのに。


私は無言で着替えを済ませた彼の背中に近づき、そして後ろからその背中に、ぎゅっと抱きついた。


すると、諦めたようなため息とともに、低い声でこんな言葉が降ってきた



「……全部、知ってて。それで、なんでそんな風にできるわけ?」



思いがけない言葉に、私の腕の力が緩んだ。


昴さんは身体を反転させて、心底“わからない”という表情で、私を見つめる。



「全部……って?」

「そのままの意味。織絵は……俺の全部を知ってるんだろ?」




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