バターリッチ・フィアンセ
●本物のフィアンセに
――昴さん、好き。大好き。
もう二度と、私を離さないで。
そんな感情が溢れ出したキスは、いつまで経っても終わることがない。
熱くとろけそうな口づけに次第に腰が砕けてきた私は、昴さんに抱えられながら芝生の真ん中に座り込むと、同じくそこに腰を下ろした彼の首に腕を回してまた唇を求める。
「……んな、積極的に来られたら我慢できなくなるんだけど」
吐息混じりにささやく昴さんの瞳からは、私の芯を疼かせる熱がじりじりと放たれていて、一瞬ここが外であると言うことを忘れそうになる。
でも、今はダメ……どんなに彼が欲しくても、我慢しなくちゃ。
だって、これから私たちにとって、とても大切なことが待っているのだから。
「……昴さん。そろそろ準備をしなきゃ」
「準備? ……なんの」
「私の格好を見て気が付きませんか?」
そう言って、私はふわふわと揺れるドレスのスカートを掴んで見せる。
それは、私たちを囲むように咲き乱れるコスモスと同じ、ピンク色のドレス。
お姉様達には白も勧められたけど、やっぱりそれは本番で着たいからと、今回は色つきのものを選んだ。
「……すげぇ、可愛いのはわかるけど。お嬢様だし、普段からそういうの着てるのかなって」
「まさか。それじゃあお嬢様というよりお姫様じゃないですか」
「じゃあ何? 久々に俺に会えると思ってわざと露出を多くしてきたとか……」
「ちがいますっ!」
……もう、昴さんたら。
そういう冗談が好きなところは全然変わってない。
頬を膨らませて彼を睨むと、昴さんはふっと微笑んで私の頭に手を置く。