バターリッチ・フィアンセ
“関係者の方はこちらへ”と案内された控室のような場所に着くと、父と姉二人が笑顔で私たち二人を出迎えてくれた
「……よかった。二人が上手くいくって信じてたわよ」
「琴絵お姉様……」
「今日の織絵、とてもキレイ。私や琴絵お姉様よりもね」
「珠絵お姉様……」
最近の二人は、私を泣かせるようなことばっかり言うから困る。
でも、今泣いたらお化粧が崩れちゃうからと、なんとか堪えて笑っていると、昴さんが部屋を横切って奥の椅子に座る父の元へ近づいていた。
「――よく、織絵の元に帰ってきてくれたね」
穏やかに言う父に、昴さんは気まずそうにうつむきながら話す。
「……俺、なんて言っていいか。あんなに“織絵に自分は相応しくない”と言っておきながら、やっぱり織絵ナシでは生きていけないなんて、虫が良すぎますよね……」
「何を言う。娘が一番に想う人と結ばれるんだ、親として嬉しくないわけがない。……織絵を、幸せにしてやってくれ」
ああダメ、父の優しい言葉に、我慢していた涙が、また溢れてきてしまう……。
「……ありがとうございます……」
昴さんは深々と頭を下げ、父はそんな彼に満足そうな笑みを漏らす。
そして椅子から立ち上がると、部屋の隅にある丸テーブルの上に置かれた小さな箱を手に取った。
……あれは?