バターリッチ・フィアンセ
――目の前に広がる都会の夜景が、私の吐き出す甘い溜息のせいで曇ってしまう。
まだ、ドレスは身に着けているし、首筋を彼の舌が散歩している程度なのに。
「……もっとちゃんと夜景見たら? こんなとこ、俺と結婚したら一生泊まれないよ?」
背後から私を抱き締める昴さんは、そう言いながらも私のドレスのファスナーを下ろしている。
目の前の美しい光景なんかより、私はあなたの指の一本一本がどう動くのかが気になっているだなんて……言えるわけがない。
だけど、そんなのお見通しの彼は私の顎をつかんで自分の方に引き寄せる。
「見なくていいなら、こっち向いて」
「――んっ」
昴さんの唇が私のそれをふさぎ、濡れた舌同士が出会ってしまえばもう逃げられない。
私たちは恥ずかしげもなく音を立てながら、深く舌を絡ませあった。
キスをしながらドレスを脱がされると、彼の手が私の身体の上を往復する。
そういえば、こんなに優しくされたのは初めてかもしれない……
昴さんはいつも何かに苦しんでいて、私の身体の上でそれを発散しているように感じることも多かったから――。